MPHって言うけどそんなものあったっけ?と思い方も多いかと思います。
MPHって何?という方向けにMPHについて解説していきます。

キャリアを歩みつつ、海外大学院で学ぶ社会人大学院生。
23年10月〜LSHTM(MS Public Health in Distance Learning)に進学。元薬剤師。
関心は薬剤疫学。IELTS :OA6.5(23.2)
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MPHの概要

MPHはMaster of Public Healthの略で公衆衛生修士のことを指します。
専門職修士と言われるものです。
公衆衛生とは「共同社会の組織的な努力を通じて,疾病を予防し,寿命を延長し,身体的・精神的健康と能率の増進をはかる科学・技術である(WHO 1949)」とされています。
簡単に言えば、社会をよりよくして病気にかからず健康に過ごせるようにしましょう。
乱暴に意訳をすればこのようになりますでしょうか。
個人というよりは社会全体で受ける利益を考えている学問だと考えています。
公衆衛生学のカバーする範囲

公衆衛生の守備範囲はとても広いです。
イメージは生活環境を整えて過ごしやすい環境を作るのかな?くらいかもしれません。
これを読んでいる方々はもっと思慮深いと思いますが、私は最初にPublic Healthと聞いた時はこの程度の認識しかありませんでした。
浅はかな考えですいません。
それでは、どこまでの範囲を公衆衛生が取り扱うのか。想像を遥かに超える範囲を公衆衛生という領域でカバーします。
例えば、COVID-19などの感染症にかからない様にするため、感染を広げないため、感染者の生命を守るための対策はまさに公衆衛生です。
日本では馴染みのないマラリアやHIV/AIDsの感染予防や感染拡大対策もまさにPublic Healthの課題の1つになっています。
感染症以外にも生活習慣病も大きな問題になっています。
タバコや清涼飲料水、加工性食品の過剰摂取の問題なども世界的な課題になっており、公衆衛生上では取り扱わなくてはならない問題の1つになっています。
また気候変動や地球温暖化と健康の関連、紛争や災害によるインフラの破壊による住民の健康被害も公衆衛生上の大きな問題です。
加えて、政治的や社会構造上の問題、文化的な問題も健康に大きな影響を及ぼす要因です。
一方で、発展途上国での出産で子供だけでなく母親の生命を守るための対策も対象になります。
日本の新生児や母親の死亡率はかなり低いので馴染みたがないかもしれませんが、発展途上国では新生児や母親の出産に関わる死はまだまだ大きな問題であり続けています。
一方で、自殺予防も公衆衛生では取り扱います。自殺を少しでも減らすにはどういった対策が効果的かなど学ぶこともあります。
もちろん、統計学、特に生物統計学は基礎からみっちり学べます。
加えて、臨床試験だけでなく疫学の試験のデザインの基礎から組み方までしっかり学ぶチャンスもあります。
余談ですが、私が勉強しているLSHTMにおいては、世界でどの様な問題が起こっているのか、それにどう対応しているのか、政治・政策決定への影響はあるのか、経済とはどのような兼ね合いがあるか、各団体(企業・NGOなど)はどう影響するのかなど書ききれないほど広い範囲の勉強をします。
最近だと、Planetary HealthやLGBTが健康に与える影響など本当に幅広くカバーしている学問になっています。
つまり、MPHは全体を網羅するにはうってつけで、その先にどこの領域で自分の知識を広げていくか、仕事のおいてどのように生かしていくかを決めるにはうってつけの学位だと考えています。
ただ、幅広い領域を一気に学ぶため、領域の深さや専門性とすると少し時間がかかるかもしれません。
MPHを学ぶには?

大学院を提供している大学は日本でも増えてきています。
ただ、調べるとわかりますがここからかなりややこしいです。おそらく「?」が出てくるのが、SPHあたりでしょうか。僕もさっぱりわかりませんでした。おそらくまだ完璧にはわかっておりません。
ちなみにSPHはSchool of Public Healthの略で、MPH(専門職)を取得できます。
日本だとSPHは東京大学・京都大学・九州大学・帝京大学・聖路加国際大学・国際医療福祉大学の6大学が該当します。他の大学のMPHと何が違うのかと言うと、文部科学省が認めた専門性大学院か大学が提供するプログラムの1つかの違いです。
プログラム校には、大阪大学・筑波大学・長崎大学・岡山大学・産業医科大学・慶應義塾大学・東北大学・広島大学・高知大学・北海道大学・三重大学(ないかもしれません)・東京医科歯科大学・神奈川県立保険福祉大学・静岡社会健康医学大学院大学(静岡SPH)・青森県立保健大学があります。(2024年4月段階)
SPHでMPHを取得するとMPH(専門職)、それ以外のプログラム校で取得するとMPH(公衆衛生学もしくは社会健康医学)になります。
ただ、どちらもちゃんとしたMPHです。SPHの詳細に関しては→文部科学省専門職大学院
どの大学に行ったとしても、MPHを取得するために必要なカリキュラム5つはどこでも学べます。
ほとんどの大学では2年のコースですが、慶應義塾大学や帝京大学や高知大学等の一部の大学では1年で学びきれるコースの提供があります。
慶應義塾大学ではMPH・MBAデュアルコースもあります。
ちなみにですが、日本でもジョンズホプキンス大学の公衆衛生学が学ぶことが可能です。
働きながら学ぶことも可能な大学もあるようなので、大学名にリンクを付けているので興味ある大学をぜひチェックしてみてください。
MPHで学ぶ内容

学ぶ内容ですが、下記のコア5領域はMPHにおいて必ず学ぶ5領域です。
①疫学
②生物統計学(統計学)
③保険医療政策・管理学(保険管理)
④環境保健学(環境保健)
⑤健康行動学(行動科学、医療倫理)
この5項目はどの大学院に行ったとしても必ず学ぶことになります。
それぞれどんな内容を勉強するか見てみます
MPHで学ぶコア5領域
疫学
簡単にかいてしまうと、いつ・どこで・どんな事(病気など)が起こっているか・その原因は何かを集団のデータでだすことでしょうか。
公衆衛生では疫学と元にしてそれらの問題に対策を立て、取り除くことでより健康的な生活を送れるようにするといった流れです。
例えば、「運動不足は身体に悪い」「運動は認知症予防になる」などを集団のデータで出すことに貢献しています。
生物統計学(統計学)
“医療・医学、公衆衛生等に関わる研究課題に対して、
どのような研究計画の下にデータを収集したらよいか(研究デザイン)
そのデータをどのように解析したらよいか(統計解析方法)
どのように解釈できるかを研究する統計学の一分野”を指します。(国立がん研究センターHPより)
公衆衛生の中では統計学の基礎をしっかり学ぶ必要があり、この知識を元にして最適なデザインや解析につなげます。
保険医療政策・管理学(保険管理)
個人と集団における医療政策、医療の提供体制、医療経済、格差と健康などコスト面を踏まえて幅広く取り扱います。
医療は平等性、不足性、情報の非対称性などから経済の中で特殊と言われています。
その中で集団の健康を守るためにどうやって政策を作り実施していくかと考える分野です。
費用対効果など経済の視点から医療を考える科目でもあります。
環境保健学(環境保健)
これはシンプルに、環境と健康の関係を考える分野です。
例えば、大気汚染や気候変動などがイメージできると思います。
それだけではなく、人口上昇による健康への影響、水の問題、食品の安全性、自然災害と人体への影響など幅広く取り扱います。
Planetary Healthなどもここに該当します。
健康行動学(行動科学、医療倫理)
健康に影響する社会的要因を始めとする要因を学びます。
社会的要因として代表的なものは社会や政治、文化的な背景、環境、社会的な要因まで幅広いです。
これらがどのように健康に影響を及ぼしているのか、実例を交えながら幅広く学んでいきます。
短く説明すると上記のようになります。これらのコア5領域を中心に、幅広く学ぶことで公衆衛生上の知識を習得していきます。
MPHに進学するバックグランド

正直に言って、バックグラウンドは本当に様々です。
ただ、感覚としては医師が一番多く、その他医療従事者(看護師、薬剤師、理学療法士など)、行政、研究者などではないでしょうか。
理系でなくても志望することは可能ですが、医療関係者が多いのは間違いありません。
ただ、残念なことにMPHは日本ではまだまだマイナーな科目でありMBAの様なインパクトを持っていない現実があります。
ただ、求人の項目にMPHが望ましいと書かれているものも増えてきているので、だんだんと認知されてきている様に感じます。
MPHの必要性は今後の私たちの活動次第かなと勝手に思っています。
リアルワールドデータの使用はどんどん増えてくることは間違いありません。
その最前線で働く上でMPHはもっとメジャーな立ち位置になってくると予想できます。
もちろん、持つだけでは何もできませんので、博士課程や日々の学びは必須になります。
取得後の仕事に関して
これも幅広い分野で活躍が期待できますが、MPHを取ってキャリアアップを狙う人、現職での専門性を上げることを狙う人がいると思います。
主な進路としては、
①行政の公衆衛生担当者
②臨床疫学・経済学の専門家
③病院、医療政策に関わるシンクタンクやNGO
④医療情報システム担当者
進路においても多岐に渡ります。
上記以外にも本当にたくさんあるので調べてみてください。
海外だとMPHは100年以上昔から学んでいる学問ですが、日本ではまだまだ新しい分野です。
提供している大学もまだまだ少ない現状があります。
そのため、MPHをどのように活かしていくかは自分次第の面は否めません。
ただ、社会においてこの領域を学んでいることは大変有意義で、かつ周りと差別化していく中では有用と考えています。
MPHについてざっくりではありますが、まとめてみました。
1人でも多くの方がMPHに興味を持ち進路として選んでくれたら嬉しいです。
ばびろにあ

